名古屋市科学館

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バイオのめぐみ

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展示作品の狙い

 私たち人類は、大昔から、まわりの生物を食料、衣服や薬として利用してきました。例えば食料として野生の植物を見つけ採集して食べることから始まり、その植物を育てやすくしたい、たくさん実をつけるものにしたい、おいしくしたいなどを目標に品種改良してきました。これも生きものを利用してきた人類の知恵、バイオテクノロジーです。このような伝統的な技術を基にして、20世紀後半に解明されてきた細胞や遺伝子の仕組みや働きを応用する新しいバイオテクノロジーの時代が始まっています。この新しいテクノロジーは、生物の基礎科学だけではなく、化学、工学、農学、医学や薬学、そして今日では情報科学の分野にも根を広げ、私たちの暮らしをささえている技術なのです。
 一方、技術の応用には、ベネフィット(利益)とリスク(危険の可能性)が切っても切り離せません。社会的、経済的な側面や環境問題としての側面というように、科学技術はいろいろな側面を持っています。どのように向き合っていけばいいか、あなたにとってより深く考え、話し合うきっかけのひとつになることもねらいとしています。

※バイオテクノロジーとは、バイオ(生物学)とテクノロジー(技術)を合わせた言葉で、日本語では生物工学といいます。単に「バイオ」ということもあります。

知識プラスワン

 展示品「バイオのめぐみ」では、バイオテクノロジーを「医療」「食べ物」「環境・エネルギー」に分けて、すでに実用化されたものや研究段階のものを紹介しています。
【医療】
 ここでは遺伝子工学や細胞工学を利用した医療や遺伝子診断、薬に関して扱っています。中でも先端医療として注目されているのは「再生医療」です。トカゲはしっぽが切れても、またしっぽが生えてくる(再生する)ように、病気や老化でうまく働かなくなった臓器を自分の細胞で修復することはできないだろうかというのが、今目指している再生医療です。そのために、ES細胞やiPS細胞の研究が盛んに行われています。
【食べ物】
 ここでは、遺伝子組換え作物、遺伝子解析を応用したDNAマーカー育種や品種鑑定、微生物の発酵を利用する技術を紹介しています。
 遺伝子組換え作物は、1994年アメリカで販売されたトマト「フレーバーセーバー」が最初です。そののち、除草剤の影響を受けにくい大豆や害虫に強いトウモロコシなどが遺伝子組み換え技術で開発され、栽培面積が世界中に広がっています。日本では、遺伝子組み換え食品の流通は、8作物(298品種)と8種(18品目)の食品添加物が許可されています(平成27年1月5日現在 )。まだ国内ではほとんど栽培されていませんが、海外から輸入され、飼料やでんぷん、油などに加工され、日本人の食生活をささえています。
【環境・エネルギー】
 地球温暖化ガスを減らすには?石油やレアメタルの資源の枯渇にどう対応していくの?汚れてしまった環境をどうきれいにするの?環境問題にもバイオテクノロジーは活躍しています。特に小さな生きもの・・・大腸菌など細菌やカビのなかま、光合成をする藻・・・を使った技術の開発が盛んです。例えば、工場の排気ガスや水から燃料になるバイオエタノールや肥料を生産する藻が見つかっています。一方、石油を分解する菌もいて、ガソリンスタンド跡地など石油で汚染された土壌をきれいにする工法が開発されています。

 バイオテクノロジーは、このようにいろいろな分野で期待されています。病気を治したい、飢餓に苦しんでいる人を助けたい、環境問題を少しでもよくしたい、、、バイオテクノロジーは、私たちのくらしの中でどんな活躍をするのでしょうか。そしてどのような未来をめざしているのでしょうか。

 


【 参考資料 】

ひらく、ひらく「バイオの世界」〜14歳からの生物工学入門 (2012) 日本生物工学会編(化学同人)
高校生からのバイオ科学の最前線(2014) 生化学若い研究者の会 (株式会社日本評論社)
著者 学芸員 尾坂知江子

 

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