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神経系・内分泌系のふしぎ

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展示作品の狙い

 からだの動きや感覚を調節する神経系には、筋肉や内臓に近い末梢神経系(運動神経・自律神経・感覚神経)と、情報を受け取り命令を出し神経系のまとめ役をする中枢(ちゅうすう)神経系があります。内分泌腺から出るホルモンは微量でからだのはたらきを調節します。
 この展示品では神経系と内分泌系について基本的なことがらを、映像画面と、その裏側で関係する知識を3つ、文章と絵で紹介しています

知識プラスワン

 「冷たいものにさわった」「この物質が不足している」などのからだの外や中のようすを知るためのしくみ、それが体中にはりめぐらされた神経細胞という特殊な細胞を中心とした「神経系」です。

【中枢神経と末梢神経】
 中枢神経系は脳と脊髄に分かれ、決まった末梢神経に命令を出したり情報を受け取ったりしています。
 末梢神経系は、4つ(大きく2つ、さらに2つずつ)に分かれます。

●体性神経系
感覚神経:目、耳、鼻、舌、皮膚などの感覚器や内臓からの情報を伝える運動神経:筋肉などを動かす
●自律神経系:内臓などを動かす(緊張・興奮したときなど:交感神経系、休息・食後など:副交感神経系)

【中枢神経の部位ごとのはたらき】
 背骨のある脊椎動物では中枢神経系が背中にそった太いすじ状に発達した「脊髄」があります。
 脊髄の頭の部分はふくらんで、脳という特に発達した器官になり、大脳・中脳・小脳・間脳にわけられ、脳と脊髄の間には延髄(えんずい)というふくらみがあります。
 脳や脊髄では決まった場所で決まった感覚を受け取ったり命令を出したりしています。
・大脳 人間らしさに最も関わり、部分によって働きが異なる
・小脳 からだの動きをコントロールする
・間脳 感覚神経の中継、自律神経系と内分泌系の中枢
・脳幹(中脳・橋・延髄) 生命の維持にかかわる
・脊髄 反射や各部と脳の中継

【自律神経系と内分泌系】
 私たちが寝ているあいだや、思いがけない状況にあったとき、何か考えて反応する時間はありません。ひとりでにからだの中や外の変化に対してからだの状態をあわせてくれるのが自律神経系と内分泌系です。この2つは互いにはたらきかけあって、私たちのからだを快適な状態に保ってくれ、そのしくみをつかさどる中枢は間脳の視床下部にあります。

【交感神経と副交感神経】
 自律神経系のはたらきは、私たち自身の意志で変えることができません。自律神経系は、そのはたらきと位置や性質の特徴によって交感・副交感の2つの神経系に大きく分けられます。両者は多くの場合同じ臓器に分布し、逆のはたらき(簡単にいうと交感神経系はからだのはたらきを活発にし、副交感神経系は、からだをリラックスさせる)をしています。また、それぞれ臓器にはノルアドレナリン(一部アセチルコリン)とアセチルコリンという物質(神経伝達物質)を放出して命令を出しています。

【内分泌系】
 内分泌系とは、内分泌(血管の中に物質を分泌し、目的のところまで血液が物質を運んでいく)を行うしくみのことで、分泌される物質は「ホルモン」とよばれます。ホルモンはとてもわずかな量でも私たちのからだに大きな影響を与えます。
 ホルモンの種類は非常にたくさんありますが、どれも分泌の促進(すすむこと)と抑制(おさえること)が他のホルモンや自律神経系、そして自分自身によって見事にコントロールされるフィードバックというしくみがあります。ホルモンの種類やはたらきについては多くの参考資料や教科書がありますので自分で調べてみてください。

【神経細胞(ニューロン)】
 からだの外と中の様子を全身に伝える専用のしくみ、それが神経系です。
 神経系を形づくる主役は「神経細胞(「ニューロン」ともいいます)」という、はたらきも形も一風変わった細胞です。
 神経細胞は表面にたくさんのとげ(突起:とっき)をもっています。木の枝のように枝分かれしているので「樹状突起(じゅじょうとっき)」とよばれます。突起のうち一本は大変長くなっていて、特に「軸索(じくさく)」とよばれ、糸のようなので神経繊維(しんけいせんい)とよばれることもあります。

【神経細胞のはたらき】
 神経細胞は、樹状突起に伝わった刺激を軸索の先にあるとなりの細胞に伝えます。
 ニューロンの中は細胞体から軸索の端へ電気的な信号が伝わっていきます(神経伝導)。脊椎動物の軸索は「髄鞘(ずいしょう)」で覆われ、髄鞘のない軸索にくらべて、情報の伝わる速度が早くなっています。
 一方、「シナプス」は、1つ目のニューロン(シナプス前細胞)から2つ目の細胞(シナプス後細胞:ニューロンまたは筋肉や臓器などの細胞)に信号が受け渡される場所です。2つの細胞の間にはせまいすきまがあります。
シナプス後細胞にこの「神経伝達物質」が届くと、電気的な信号が生まれて軸索を伝わっていきます。
軸索の端に信号が送られてくると、隣の細胞に向かって「神経伝達物質」という物質が放出されます。この物質は神経の種類や場合によって種類や量が異なっており、複雑な信号を隣の細胞にうまく伝えるしくみになっています。
 隣の細胞にこの「神経伝達物質」が届くと、電気的な信号が生まれて軸索を伝わっていきます。せまいすきまですが、逆向きに情報が伝わることはありません。
 このように、神経の情報の伝わり方には、細胞内では伝導(電気)と隣の細胞へは伝達(物質)の2つの伝わり方があるのです。

 


【 参考資料 】

解剖生理を面白く学ぶ(2008年)増田敦子(医学芸術社)
Newton別冊 人体図(2015年)ニュートンプレス
驚異の小宇宙・人体別巻2ビジュアル人体データブック(1990年)NHK取材班(日本放送協会)
新版 たのしい理科 4年・5年・6年、理科の世界2(2015年)有馬朗人ほか(大日本図書)
改訂版 フォトサイエンス生物図録(2007年)数研出版
実物大人体図鑑 3内臓(2010年)坂井建雄(大日本印刷)
たんけん!人のからだ 1 手や足はなぜ自由に動く(1999年)坂井建雄(岩波書店)
からだの不思議 だれでもわかる解剖生理学(2000年)坂井建雄(メヂカルフレンド社)
シリーズ感覚のふしぎ(2015年)、脳とニューロン(2016)NEWTON

絵と文 学芸員 堀内智子

 

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