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環境とくらし

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展示作品の狙い

 人間ほど様々な環境で暮らす生物は他にいません。他の動物と比べ、はるかに環境に適応したり、環境を変える能力を持っているからです。人々の生活の中に、厳しい環境に適応する知恵が現れています。着るもの、食べるもの、住む家など、その土地の環境に応じた暮らし方を見いだしています。

知識プラスワン

■ツンドラでのくらし
 ツンドラとは、年中氷点下の気温のため水が溶けることがほとんどない環境です。このため、永久凍土が発達しています。夏には、 コケ類などが育ちますが、草や木は育ちません。
 そんな極寒の地ですから、防寒はたいへん重要です。イヌイットの伝統的な防寒着としては「アノラック」が有名です。フードがついたアザラシやトナカイの毛皮で作られています。アザラシの毛皮の肌触りをぜひ体験してください。上着だけでなく、手袋や肌着などもアザラシの毛皮で作られたものがほとんどです。
 雪を使って作る「イグルー」と呼ばれる家があります。雪をブロックのように切り出し、ドーム状に積み上げてつくります。とても寒そうな感じがしますが、実は外の冷たい風を防ぎ、表面積を最も小さくできる半球形であるため、熱が逃げにくく、内部は暖かいのです。雪がとける夏は、狩猟シーズンで、「トゥーピック」と呼ばれる、アザラシの皮で造ったテントに住みます。
 食料を得るのも大変です。わずかないる動物が彼らの食料となります。カナダのイヌイットはアザラシやセイウチの肉や魚が主食です。
■砂漠でのくらし
 雨が非常に少なく(年間降水量が250mm以下)、湿度が低く、朝と昼で気温の差が大きい気候です。生物にとって、水がほとんどないということは、それだけで生きていくことが難しい過酷な環境だと言えます。このため、人々が定住できるのは、地下水がわき出すオアシスや井戸の近くだけです。
 砂漠にすむ人たちは、ダブダブのゆるい全身を覆う長い服を来ています。暑そうに見えるかもしれませんが、強い日差しや熱から身を守り、また、脱水状態にならないようにするためです。帽子やベールは、砂嵐や強い日光から顔を守ります。
 昼の暑さを防ぎ、夜は寒くなりすぎないよう、十分断熱できることが必要です。そこで、簡単に手に入る土あるいは土を固めて干しただけの日干しれんがで作られています。窓を小さくして扉も閉めてしまえば、外の熱風や強い陽射しも入らず、涼しく過ごせるというわけです。逆に、夜になると気温はぐんと下がるので、扉や窓を開けて家の中にこもった熱い空気を逃がします。
 ヒツジやヤギなどの家畜の肉や乳が主な食料です。ヨーグルトやバターも作られます。交易により得られるキビなどの穀物を煮て食べることもあります。遊牧民の場合、狩りをして動物の肉を食べます。
■ジャングル(熱帯雨林)でのくらし
 1年中、高温多湿気温な気候です。気温の季節変動は非常に小さいですが、降雨量は季節的変化が見られ、雨季と乾季に区分できます。昼間は、風も少なくうだるような暑さとなり、夕方にはしばしばどしゃぶりの雨(スコール)となります。常緑広葉の密林が広がり、地球の生物種の半分以上がいると言われるほど生物が豊富な地域です。南米のアマゾン川、アフリカのコンゴ川流域、インドネシアが代表的です。
 熱帯雨林にすむ人々は、木の皮や葉などで作った衣装を身にまとう程度で、服と言えるほどのものはありません。高温多湿の熱帯雨林の中では、儀式などの場合を除くと、衣服を着る必要がなかったからです。
 家は、暑さをしのぐため風通しが良く、木材、草や葉を使って造られています。湿気を防ぐため、床を高くしたり、雨が入らないようするため、屋根を大きく張り出させたりします。
 生物の多いジャングル(熱帯雨林)では、食料には事欠きません。狩猟、採集、農耕により、肉や魚、穀物から木の実まで、地域で種類は違うものの、なんでも手に入れることができます。
■宇宙でのくらし
 最近では宇宙にも進出しようとしています。当然、宇宙には空気もなければ、重力もありません。太陽光が当たる場所はたいへん高温に、当たらない場所はとても低温になります。さらに、生命に有害な紫外線や宇宙線が多く、高速で飛んでいる細かい隕石など存在しています。もちろん、生物が生きていくことができない過酷な環境です。
 しかし、宇宙船や宇宙ステーションの中では、地上と同じ服装で生活できるようになっています。むしろ、行動性を重視しして軽装であることが多いです。といっても、宇宙空間にそのまま出ることはできません。宇宙空間で作業するときには「宇宙服」を、打上げと帰還の時にはフライトスーツを着ます。
宇宙服は、宇宙放射線、微小隕石、真空状態、極低温などから守るための機能を持っていることが必要です。

 


【 参考資料 】

□参考資料
気象ハンドブック(1995年)朝倉正他(朝倉書店)
気象科学事典(1998年)気象学会編(東京書籍)
理科年表(2000年)国立天文台編(丸善)
□著者 学芸員 西本昌司

 

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