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江戸時代の天文学

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展示作品の狙い

 江戸幕府の鎖国体制のさなか、八代将軍徳川吉宗(よしむね)は西洋の天文暦学をもとにした正確な暦を作ろうとして、洋書の輸入禁止令をゆるめました。その結果、出島のオランダ商館を通じて、さまざまな科学書がもたらされました。人々は西洋の先進的な科学知識におどろき、大いに刺激を受けたようです。一般向けの解説書も発行され、洋学は庶民の間にまで広がっていきました。目新しい西洋流の宇宙観なども、抵抗なく受け入れられたのです。
 この展示では、江戸時代の和書、掛軸、望遠鏡などを交えて、近代天文学が日本に根づいていったようすを紹介します。

知識プラスワン

【田安家に伝えられた天象図掛軸】(複製)
 この掛軸は「地球内水火脉之図(ちきゅうない すいかみゃくのず)」「太陰之図(たいいんのず)」「太陽之図(たいようのず)」の3幅対の絹本作品で、八代将軍徳川吉宗の次男宗武(むねたけ)を家祖とする田安家に伝えられたものといわれています。描かれた天象図は、いずれもアタナシウス・キルヒャーの『地下世界』(ラテン語初版1665年/オランダ語版1682年、アムステルダム刊)に掲載されている銅版画に酷似しているため、江戸時代に輸入された同書(おそらくオランダ語版)を専門の画工が精密に模写したものと思われます。司馬江漢や中伊三郎も同様の銅板模写を残していますが、神戸市立博物館の勝盛典子氏の調査によると、この肉筆の掛軸のほうがそれらより精度が高く、原図の銅版画の極めて細い線や点など、またラテン語の文字などもほぼ正確に転写されているということです。作者や年代は不詳ですが、一流の画工の手によるものでしょう。
 この掛軸は、古典書籍の有数のコレクターとして知られた国文学者の故横山重(しげる)氏の旧蔵品で、1980年ごろ、横山氏から愛知県犬山市の故山田達雄氏に譲渡されたものです。作品保護の観点から、複製品(天象図の部分を複製し、それを新たに表装したもの)を展示しています。

 


【 参考資料 】

参考資料
星座の伝説(1980)草下英明(保育社)
キルヒャーの世界図鑑(1986)ジョスリン・ゴドウィン/川島昭夫(工作舎)
江戸の天文学者 星空を翔ける(2008)中村士(技術評論社)
文 学芸課 天文係

 

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